新企画 “エネルギー×○○企画”、始動。
普段、GreenTech Labsではエネルギー・環境領域を主に取り扱っていますが、そこから少し離れた領域でご活躍されている方とのカジュアルな対話を通じて、イノベーションや事業のネタを創出していくことを目的として、新しいオフライン参加型企画を立ち上げました。
第1弾は、ソーシャルメディアマーケティングの分野でご活躍されている榊さんをお迎えし、ソーシャルメディア分析領域について教えていただくと共に、ソーシャルメディア分析のエネルギー・環境領域への活用可能性や、データ分析に関する疑問・悩みなどについて幅広くディスカッションしました。当日はコミュニティからも8名の皆さまにご参加いただき、活発な議論を行うことが出来ました。
榊さんから頂いたアイディアや、当日の議論の様子をレポートします!
当日の様子。左から3番目が今回ゲストとしてご参加いただいた榊さん。
榊さんご経歴
榊 剛史(さかき たけし)さん(株式会社ホットリンク 開発本部R&D部長)
- 大学院修士課程ご卒業後、電力会社に入社し3年勤務。
- その後、大学に戻り博士号を取得し、大学での研究職に従事されたのち、株式会社ホットリンクに入社。
- 専門は自然言語処理。主に、AI/人工知能、自然言語処理、ウェブデータの解析、計算社会科学領域をカバー。
- 「中国・清華大学の「世界的AI研究者2000人」に選出された8名の日本人の内の一人。(Twitterの投稿から地震の震源地を推定する手法に関する論文の引用数が突出して多いことが評価されての選出。)
榊さんの取り組まれているお仕事内容
- SNS(Twitter)の分析による広告運営の効率化を支援。
- 具体的には、Twitterの投稿情報から、性別/年齢/居住地域/興味・関心領域等を解析することにより、ある商品に関心の高い属性を抽出したり、特定の属性の人が何に関心を持っているか分析し、広告運営に役立てる。
- 例えば、CMに起用するタレントを選定する際に、そのタレントのフォロワーの属性を分析することで、商品を訴求したい層にフォロワーが合致するタレントを選ぶ、など。
- また、対特定属性への広告訴求力の検討だけではなく、解析したSNSの使われ方・仕組みを活用し、ユーザーが情報を拡散するよう仕向けることで、より影響力の大きい広告手法を検討することもある。
ソーシャルセンサーという概念
- SNSのユーザーをセンサーとして捉えることで、そのセンサーデータ(=SNSへの投稿)を観測し、統計処理することで、今まで得られなかった情報が得られる。
- 具体的には、地震震源地の特定、交通渋滞状況の把握、街中での人物発見、などがソーシャルセンサーの活用によって実現されている。
社会課題の芽をTwitterからいかに拾えるか?
縦軸に頻度、横軸に発言者の多様性を取ったときに、
- 頻度高 × 多様性高 : 社会全体の課題
- 頻度高 × 多様性低 : 一部の層で問題視されている課題
- 頻度低 × 多様性低 : ←ここに将来的な社会課題が眠っている可能性がある
ディスカッション内容
防災の観点から、ソーシャルセンサー×リアルセンサーの組み合わせをで何か出来る余地はないか?
- 実センサーである程度対象地域を絞った上で、その地域のユーザーに絞ってTwitterから情報を拾う方法は有効だと考えられる。一方で、その逆(Twitterから事故・災害の地域を特定する)のは難しいと思う。
- NICT (National Institute of Information and Communication Technology, 情報通信機構)の運営しているDISAANA(ディサーナ)が災害関係のSNS分析では日本で一番進んでいる。
- SNSを活用した防災・災害情報分析は、SNSに情報が投稿されることが前提となってしまうが、実態としては自発的に投稿されることが少ない(被害に合っている際にはそれどころではない)ため、SNS上から情報を集めることが一つのハードル。どちらかというと、ソーシャルセンサーとしてのSNS分析を行うよりは、LINE チャットボットなど電話より楽にアクセスできる災害向けチャットボットを用意して、災害が起きた際に被害情報を入力してもらえる窓口を設置することの方が意義があるかも。
Twitterデータを使った解析は、どういう切り口は精度が出て、どういう分析は苦手か?
- ユーザーの属性推定(投稿者の年代/性別/地域/興味・関心の分類)はかなり精度高く可能。
- また、投稿内容のポジティブ/ネガティブの判定も精度高く判定可能。
- 一方で、「将来、何が流行しますか?」といったOpenな問題は難しい。
- 「ある特定のビジネス・事象がどういう層に興味を持たれているか?」といったClosedな問題は比較的解きやすい。
機械学習を活用することがありきで、結局何がしたいんだっけ?となりがちなのだが…
- それはよく陥りやすい課題。
- 何を解決すると嬉しいのか?どうビジネスにつなげるか?を考えることが重要。
- 例えば、蓄電池であれば性能を上げることが価値、GoogleやFacebookのビジネスではクリック率を高めることが価値。
- 機械学習の担える主要な領域は、業務効率化とスペシャリストの再現であると考えられ、前者はコストの圧縮、後者は差別化を実現することがビジネスにつながるはず。
- 解くべき課題を考えるためにはビジネスドメインの基礎知識が必要不可欠。
データを分析しようにも、まずはデータがないと分析できない。日本はデータ蓄積・開示の観点でかなり遅れを取っているのでは?
- 電力関係のデータでいうと、イギリスは規制機関がデータ開示を促し、多くのデータが開示されている。結果として、発電によるCO2排出量が地域別にリアルタイムで可視化出来ている。日本では開示されているデータが全く足りず、そのような取り組みを行おうにも難しい。
- 電力業界のデータについては、ただ漠然とデータの開示を求めても規制機関(役所)も動けずなかなか進まないと考えられるため、用途やその必要性もあわせて訴えていく必要があるように思う。2050年までにゼロエミッションの目標を掲げたことをきっかけに、その達成率をモニタリングするためにも情報の開示の必要性が増すと考えられるため、情報開示を訴えるには良いタイミングかもしれない。
- 日本はそもそもIT活用が海外に比べて周回遅れである印象。ITやデータ活用に関するリテラシーを高める教育をもっと初等教育の段階から行っていく必要があるのでは。
今後も”エネルギー×○○企画”を開催する予定ですので、ぜひご参加の上一緒に議論しましょう!
(終わり)
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記事執筆日: 2020年12月1日
執筆責任: GreenTech Labs