GreenTech Labsでは、GreenTech領域で独自の強みを持つスタートアップが日本に増えることを支援していきます。
これからスタートアップを始めるにあたって、GreenTechスタートアップへの世界の投資のトレンドを知り、また分野や事業を選ぶ参考になるような情報を提供します。
今回のトピックは「世界のビジネス・リーダーたちによるエネルギー分野への投資」です。
もくじ
[1] 投資の経緯
[2] 投資の方針
[3] 投資先の事例
[4] 日本からのスタートアップへのヒントとは?
[1] 投資の経緯
米国のマイクロソフト社の創業者にして、現在は世界最大の慈善基金財団「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の代表であるビル・ゲイツ氏。彼は、かつてから気候変動に対しての実効的な取り組みの必要性を訴えていました。
東日本大震災があった2011年より前から、エネルギー分野のスタートアップへの投資を行っていました。
2015年、彼はついに世界のビジネスリーダーたちと共に、大きな活動に踏み出しました。
「ブレークスルー・エナジー・コアリション」という、「革新的なクリーンエネルギーを開発し、市場に送り出す」企業を支援するための基金をつくったのです。
そこに参加した個人投資家は、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏、Amazonのジェフ・ベゾス氏、ソフトバンクの孫正義氏、アリババのジャック・マー氏などです。
2016年には、「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ」(以下、BEVと称する)という10億ドル(1,100億円)規模のファンドを設立しました。
[2] 投資の方針
BEVの掲げるビジョンは、温室効果ガスの抑制です。
世界各地の研究機関で進められているクリーンエネルギー分野の技術開発を早期に実用化することが大きな目的です。
投資領域は大きく分けて5つ。電力・交通・農業・製造業・建築物です。
電力について、詳しく見てみましょう。
具体的には以下の技術革新テーマの重点として掲げられています。
・次世代核分裂
・高温岩体地熱発電
・超低コスト風力発電
・超低コスト太陽光発電
・核融合
・超低コスト蓄電池
・超低コスト蓄熱装置
・超低コスト伝送
・低コスト海洋エネルギー
・次世代超フレキシブル送電ネットワーク管理
・高速ランピング(出力調整)低炭素電源
・低炭素・高信頼性分散電源
・CO2回収
・CO2貯留・利用
[3] 投資先の事例
2018年には、実際にBEVが投資するスタートアップが開示されました。
エネルギー分野のスタートアップに関して以下に2社、紹介します。
<1> Quidnet Energy
地下からくみ上げた水を利用して水力発電を行う技術を開発します。
具体的には、ダムや川がなくても水を使ってエネルギーを貯めることができる仕組みを作っています。油田やガス田のシェール岩の小さい割れ目に水を入れてそこで圧力が生じて、エネルギーが必要になったタイミングでその力を使ってタービンを回してエネルギーをつくるという仕組みです。
<2> Form Energy
長期間にわたり、エネルギーを貯蔵できる2種類のバッテリーの開発を行うスタートアップてす。
技術的には、硫黄を使ったバッテリーを開発しています。これを使うことで長くバッテリーを貯めることができます。
硫黄自体はガスや石油の生成過程で派生する気体でたくさんあるということもポイントです。
[4] 日本からのスタートアップへのヒントとは?
BEVは、短期間で投資回収が難しいながらも、世界の課題解決に重要な技術的革新を起こすスタートアップに投資しています。
日本の大学や企業の研究施設では、先進的で革新的な発見と、それを使った技術の種が日々生み出されています。
その技術を中心においたスタートアップは、一般的なベンチャー投資家から投資を受けようとしても、投資回収が難しいという判断から、投資を受けづらい可能性があります。
しかし、会社立ち上げ最初期から、BEVのような投資家からの投資を受けることを想定して、技術開発とビジネス立ち上げを行っていけば、実際に世界規模の投資家から投資を受けて、まさに世界の課題を解決するスタートアップに成長できる可能性があるのではないでしょうか。
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《本記事を書くにあたっての参考情報》
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記事執筆日: 2019年4月25日
※この記事は、上記の日にち時点で得られた情報に基づき、GreenTech Labsが執筆したものです。
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執筆責任者: 高橋昌紀(GreenTech Labs コミュニティマネージャー)