「純粋な夢、好きなこと、やってみたいという気持ち。」そんなワクワクで仕事をする。

まーきち@エネルギー業界1年生の先輩探訪:第2回
株式会社OKYA 菅野優さん(前編)

エネルギー業界1年生の「まーきち」こと佐々木将人さんをインタビュアーとしてお迎えして、エネルギー業界で働く先輩方に今までの歩みや苦労話、仕事に対する熱い想いなどを伺う「ひと」に焦点を当てたインタビュー企画です。

今日ご紹介するのは株式会社OKYAの代表取締役・菅野優(かんの まさる)さんです。菅野さんは発電に興味があったこと、会社の先輩の紹介によってウィンドサーフィンをされた経験をきっかけに洋上風力発電の会社を立ち上げられました。電線関係の会社に17年勤められ、起業に至ったエピソードに迫ります。

 

新しいアイデアを出すのが大好きだった

 

―― 最初の職場ではどのようなお仕事をされていたのですか?

電線関係の会社で携帯電話で、薄型ディスプレイの周りにつける基板の部分の仕事をしていました。
どっちかというと技術的なところよりも作り方や仕様のところでここをもっとこうすれば安く作れるのに、とかアイデアを出すところに興味がありました!

 

―― なるほど、じゃあそうやってアイデアを考えていた経験が現在のお仕事に活かされているのですか?

そうですね。作り方の部分では影響範囲を考えるという部分では似ていると思っていて。「その前の工程はどうだろう、その後ろの工程はどうだろう、品質管理面では問題ないかな?」など多層的に考える中でメリットの方が大きいとなればやるといった感じです。
それは今の風車開発でも十分に活きています。風車でいうと、建てる場所の問題とか立てた後の周辺の人々との調整を想定することなどに生きています。

こうした影響範囲を考え事業を形にする菅野さんは様々なアイデアがあると言います。

今は3つアイデアがあって。

1つ目は海の情報をとってきて配信することです。ただ発電するだけだと、ひたすら発電コストの低減のみを追求する発電種別と比較してコスト競争力が出せるか?という問題もありますが、海の情報を取ってきて、配信するなど、付加価値サービスを提供することによって、電気代を少しでも安くしていけないかなと思っています。
2つ目は海の情報の配信を漁業に活かすことです。例えば、魚群探知センサーを付けて、漁師さんに伝えることが出来ますし、逆に発電したバッテリーや水素の回収を漁師さんに手伝ってもらう、といったウィンウィンの関係が構築できないかなと考えています。日本は漁業国で、漁師さんは海に面している県のどこにでもいますので、上手く関係構築して仲良くやっていく方法も可能性のひとつと思っています。
3つ目は造船屋さんとの協力です。再エネ関係で今後政府予算も多く割り当てられると思いますが、浮かべる風車と結び付けられないか?など、色んなシナリオを描こうとしています。

ワクワクとたくさんのアイデアを出す菅野さん。たくさんのアイデアを出した背景にはどんなエピソードがあったのでしょうか。

 

思いついたら行動に移してみる。

 

―― 小さい時からエネルギー分野とのことですが、最初からずっとエネルギー関係のことがしたかったんですか?

福島県の楢葉町という発電所から近いまちに住んでいたので昔から発電には興味があったのですが、人と違う方法で発電してみたい、という漠然とした思いはありました。
ウインドサーフィンを始めて、風が吹かないと回らない風車を見て、小さい時からの思いが一つに繋がったのです。周りに話をして相談してみたり、試作機を作って浮かべてみたりして技術的に成立するのか?の確認はしましたが、その後はあまり深く考えずに会社を飛び出してしまいました(笑)。

 

―― なんと!不安などはなかったんですか?

なかったわけではないですが、「やってみたい!!」という気持ちの方が強かったんです。

―― でも、うまくいかない時期とかあるじゃないですか?

もちろんありますね。でも、その都度、何かしらの結果は出ますし、過ぎたらどうにでもなると思っています。上手くいかなかったがために、ひどい目に合うという経験はないですね。こうしたメンタリティになったのは高校生の時にラグビー部だった影響も大きいかと思います。練習はきつかったのですが、きついと思うより、あといくつ数えれば今が過ぎて楽しい時間がくると思って、乗り越えてきました。

―― すごい!じっくり考えてから行動を起こすというよりは、思いついたら動いてしまうタイプでしょうか?

はい!私は5割思いついたらもう動いてしまうタイプですね。感覚的にやってしまおうとなったらやってしまい、やりながら後付けで考えていきますね。みんながやっていないことを自分でやって喜んでいる、というのは小さい頃からあったと思います。
小学校の算数の授業でも、先生が「途中まででもいいから分かった人いたら手を挙げてください」と言われたので、本当に途中までしか分かっていないけど、手を挙げて答えて、ここまでしか分かっていないので後は他の人にお願いしますと発表したような子です。だいたいこういうシーンって途中までで良いと言われても、最後まで答えられる人しか答えないですよね(笑)

事業もこれまでは、構想を話しても、どちらかというと、そんなの無理だと色々ネガティブな言葉も幾度となくかけられました。ただ、ネガティブな言葉は気にせず、進めています。

 

思い立ったらすぐに行動に映してしまう菅野さん。もちろん課題もあると言います。

―― 何か事業をやっていて課題に感じることとかあったりしますか?

周りを巻き込めていないことですかね。地方ですし、同年代が若くないのもあり、なかなか引き込みにくい環境かと思います。もっと魅力的なビジョンを語れるようにならないとダメだなとは感じています。3月にビッグサイトで風力発電展(※参考1)がありますので、そこでは出展して仲間を募れればと思っています。

 

―― そういえば最近、福島で洋上風力の発電機の撤去の記事を見ましたが、あちらは何か関係あるのでしょうか?

まさにうちの地元に設置されていた実証機ですね。楢葉町で洋上風車の実証機を3台浮かべていたのですが、一番大きいものは既に撤去解体されました。残りの2台も撤去することが決まりました。あの洋上風力が設置されている場所は、小学校で遠足にいっていた場所から良く見える場所なんです。生まれ故郷ですし、浮かぶ風車同志です。なにかのご縁かと思い、いつか近くに浮かべられたらと夢見ていたのですが、撤去されることになってしまい、本当に残念です。

課題をたくさん抱える菅野さん。それでも今の事業が楽しいと言います。

 

「ワクワク」「やりたい」が事業を続けるモチベーション

セーリングって「洋上のチェス」と言われていて、風向きを見ながら、どうやって目的地まで行くか、コース取りを決めるって面白いんですよ!でもチェスでAIが人間を今は超える時代。だから自動航行のヨット型ドローンを使って洋上風力発電だって実現できると思っています。
海外ではOceanbirdという巨大な帆で動く貨物船が開発されているっていう事例もありますし、国内でもウィンドチャレンジャーの開発が取り組まれています。できないことは無いと思います。良い連鎖が構築できると、良い方向に向かい始めるのではないかと信じています。

―― すごい!どうしてそこまでのモチベーションが出るんですか?

高校、大学で一緒だった友達が同じ工学部にいたのですが、共通の友人が飛行機のパイロットになったのを見て、「俺は実はパイロットになりたかったんだ」、って言って退学してパイロットの道に進んでいきました。その時に私は、自分の中になりたいものを思い付かずうらやましいな、と思ったのです。その後、この風力発電を思い付いたときに、自分も「そういえば発電をやりたかったんだ」、というのを思い出したんです。
私の夢が「他の人と違う発電をする」こと。そしてプライベートでウィンドサーフィンやってたことが活かされて風を使って海の上で発電ができる。そしてそれが国まで同じ方向を向いている。やるしかないですよね!

「自分のやりたい!面白そう!」のワクワクに従い、遊び心を持って事業を進めて来られた菅野さん。例え風向きが変わったとしても自分が楽しめる作戦を立てて前に進んでいく姿が思い浮かびました。もし苦しい時が来たら、「自分のワクワクすることって何だろう?」と心に聞いてみてはいかがでしょうか。

僕も北海道1年目×エネルギー業界1年目として、手探りでワクワクする方向を見つけていきたいと思います。

次回、OKYAの事業の技術的な点や、ビジョンなどのお話を伺った後編です。

風を求めて移動する風車 ~自動航行ヨット型ドローンで描く新たな洋上風力発電の形~


【参考】

※1: 風力発電展 https://www.windexpo.jp/ja-jp.html

 


この記事に関してのお問い合わせやご相談は、以下のフォームからお送りください。内容確認の上、事務局にてできる限りの対応、回答をさせていただきます。

記事タイトルを入れてください(正確でなくてOKです。どの記事のことか分かれば大丈夫です)
1. 〜 3. から選んでください。インタビュイー(ゲスト)の方に連絡を取りたい場合は、2. を選択ください。
2. インタビュイーへの連絡希望の場合は、記入いただいた内容を事務局で確認の上、転送含めて対応させていただきます。
フォームの回答内容は、GreenTech Labsにて管理、取扱いを致します。 インタビュイーへの連絡希望の場合は、記入いただいた内容を事務局で確認の上、インタビュイーご本人への転送ならび連絡先の共有を含めて、対応させていただきます。この点を確認いただけましたら、上のチェックボックス [同意した] にチェックしてください。

記事執筆日: 2021年1月29日

執筆責任: GreenTech Labs