安価でクリーンな電力に、誰もが自由にアクセスできる世界を創る

ネルギー&環境領域で活躍する人と知見を繋ぐインタビュー:第24回
安価でクリーンな電力に、誰もが自由にアクセスできる世界を創る

今回は、電気を買うのは小売会社からという常識を覆し、需要家と発電事業者がP2Pで自由に電気を売買可能なプラットフォームを開発し、社会実装に向けて疾走するデジタルグリッド豊田社長のインタビューです。現行の電力システムの課題、そこに風穴を開けるデジタルグリッドプラットフォームの魅力、再生可能エネルギーの拡大に向けた熱い思いまで、多様な切り口でお話を聞かせて頂きました。

本日のゲスト:豊田 祐介(とよだ ゆうすけ)さん@デジタルグリッド株式会社 (写真の中心手前)

<略歴>
2012年東京大学大学院工学系研究科修了(技術経営戦略学専攻/阿部研究室卒業生)後、ゴールドマンサックス証券に入社。証券部門において為替・クレジット関連の金融商品組成・販売に、戦略投資開発部においては主にメガソーラーの開発・投資業務に従事。2016年よりPEファンドのインテグラルにおいて幅広いセクターのPE投資業務を行い、2018年よりデジタルグリッドに創業メンバーとして参画。
2019年7月2日にデジタルグリッド株式会社代表取締役に就任。

--最初に、御社の事業について簡単にご説明いただいてよろしいでしょうか。

デジタルグリッドは2017年10月に立ち上げた会社です。従来の電力取引市場とは異なるルートで発電所を保有する企業(以下、発電家)と電力を購入する需要家を繋ぐ「デジタルグリッドプラットフォーム」(以下、DGP)を提供し、P2Pで電気を自由に売買する仕組みを実現しています。民間の電力取引所という呼び方もしていますね。

従来、需要家側が取り得る選択肢は、電力会社が提示するメニューに限定されていたと思いますが、DGPを活用することで、需要家が発電家との間で固定価格の長期契約を締結したり、不足分を日本卸電力取引所(以下、JEPX)で調達したり、オーダーメイド型の電力調達が可能になります。発電家からの直接購入は、発電家と需要家がそれぞれ希望の量と価格を入札し合って、折り合いのついた価格・量で取引する、いわゆるザラバ方式です。弊社が小売事業ライセンスを持ち、顧客管理、需給管理、JEPX取引から料金計算・請求まで小売事業者が果たすべき仕事は、DGP上でAI等のデジタル技術を活用して自動化し、肝心の電力調達構造については、需要家に自由度を持って設計していただく思想となっています。

また弊社は、DGPを活用して再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入を拡大することに拘っています。私は過去にゴールドマンサックスで再エネ開発に携わった経験から、再エネ拡大のためには金融の視点を持つことが大切だと感じています。今後、再エネ普及政策がFITからFIPに見直されると、再エネ事業者も卸電力市場で直接取引し、インバランス義務も負うことになりますので、FIT時代のように気軽に市場参加するのは難しくなりますし、事業リスクが増す分、金融機関からの資金調達も困難になります。そこで、再エネ事業者が市場に参加しやすくなるデジタルプラットフォームを提供すると同時に、需要家との間で固定価格の長期契約を実現することで将来収入に予見性を生み出し、資金調達しやすい事業環境を作ってといこうという狙いです。

 

デジタルグリッドプラットフォーム概要

 

デジタルグリッドが提供する機能/サービス

 

--デジタルグリッドのミッションは「エネルギー民主化」。それが実現した社会では、需要家がどういう姿になっていることが理想でしょうか?

弊社がお付き合いしているお客様は、電力消費量が大きい大企業が多く、調達方法にも強い興味を持たれています。新しい電力調達の方法を真剣に模索されていますので、非常に勉強熱心ですよね。発電家からの卸供給の実現方法ひとつ取っても、平日のミドル電源で良いのはないかとか、固定価格のベース電源でヘッジしたいとか、自家発を導入してこう使いたい、とか、かなり細かい要望をいただきます。お付き合いしている某社のご担当者は、1年前に電力調達の担当になったばかりで、最初は全く知識がなかったところからスタートしましたが、今では、驚くほど深い電力調達の知見を身につけられています。

一方、調達規模の小さいお客様に対しても、同じレベルの電力調達のプロの方がいることを期待するのは難しいかもしれません。デジタルグリッドとしてやっていきたいと考えているのは、ウェルスナビのように、分かりやすい調達モデルをいくつか作り、各モデルのリスク分析等も添えて、お客様へご提示していくことです。

JEPXの価格高騰が大きな話題になっていますが、まずは、JEPX購入量が多くなると市場価格連動リスクに晒されることは丁寧に説明し、ご理解いただく必要がありますよね。そのうえで、市場価格変動リスクを低減するためのヘッジ策等も、プラットフォーム上でお客様が選択可能なオプションとしてご提示していけるのが理想と考えています。

 

需要家が主体的に設計する電力調達モデル

 

--具体的には、お客様に対してどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

お客様によって、また場所や業種によっても電気の使い方は異なりますので、まずはお客様から過去の30分値データ(※注釈1)をいただいて、分析し、現行の電気料金はどういう水準にあるのかを理解してもらうところが出発点です。そのうえで、調達構造の見直し方法を3パターン程度、ご提示するというのが通常の流れですね。お客様が独自に保有する発電設備を利用する場合には、系統連携協議とか、お客様内でのエネマネ(※注釈2)方法等のアドバイスも行います。1年目にお付き合いする際には、小売会社が裏でやっていることをお客様にも理解していただきながら、調達構造の見直し検討を共に進めていきます。

先ほども触れましたが、お客様の電力調達の担当者の習熟速度は凄まじく、2年目にもなると、市場の仕組み、取りうるオプションや相場観、DGPの仕組みも十分に理解されますので、あまり相談もなく独自で進められていますね。将来の電力調達構造の設計には長期と短期の両視点が必要ですが、長期の調達設計は弊社と一緒に作り上げていき、短期の調達は、お客様が直接仕事を進める形に徐々にシフトしていくイメージです。

--お客様とコミュニケーションする際に心掛けていることはありますか?

いつも心掛けていることは、お客様の工場等を訪問する際には、お客様がやりたいことを深く伺うことですね。「PPAモデル(※注釈3)で逆潮流してみたい」とか、「バイオマスの買い取り価格も今は12円程度で高く売れないので、自社ビル・自社工場に供給出来ないか?」とか、お客様それぞれの事情、思いを持たれています。

お客様の電力調達担当の方々も目が肥えており、再エネなら高くてもよいなんて安易に妥協される会社はなかなかいませんので、価格にも拘り、突き詰めて検討されています。そうしたお客様の声を聞きながら、調達モデルを一緒に検討していますので、今はコンサルのような仕事をやっているとも言えるかもしれません。私達も、こうしたお客様と共に検討する期間を通じて、他のお客様にも使っていただける良いモデルを作っていきたいと思っています。

--より良いモデルを作るためのコンサルのような仕事と聞いてふと思ったのですが、DGP上で需要家向けのモデル設計するプレイヤーが登場したり、他の小売事業者さんとコラボしたり、といったことも想定されるのでしょうか?

プラットフォームが広がってくると、弊社のプラットフォーム上でモデルを設計してくれるコンサルティングのようなプレイヤーが出てくることも十分にあり得るかなと思います。お客様に寄り添ったより優れたモデルが出てくるのは私達としても歓迎ですしね。

他の小売事業者とのコラボも当然考えられます。ただ、現在は一般送配電事業者への計画提出の際に部分供給は許可してくれないという実態もあります。弊社は、小売ライセンスを保有していますが、基本的に小売事業そのものをやりたいわけではありませんので、ルールさえ変われば、他の小売事業者とのコラボもあり得ると考えています。

--調達モデルを定型化しすぎると、お客様の設計自由度が奪われてしまうという懸念はないでしょうか?

それはおっしゃる通りで、バランスの取り方が難しいですね。自由度がありすぎても小売会社と同様な機能とリスク管理をお客様で全て完結させるのは難しいでしょうし、だからといって型を作りすぎてしまうと自由度を狭めてしまいます。スケールさせていくにあたり、定型化されたモデルの中でお客様の自由度を入れ込む余地をどう確保していくかは今後の課題ですね。今はまだお客様の声を聴きながらカスタムメイドで回している状況です。

--再エネ価格は今後も更に下がっていく中で、固定価格の長期契約が結ばれると、より安価な電源に切り替える機会を失ってしまうという側面はないのでしょうか。

元々、このプラットフォームを作った根底には、小売事業者の再エネ供給力が追い付いていないため、再エネを保有する発電事業者と需要家との間で直接長期PPA契約を実現させるコーポレートPPAのコンセプトがありました。再エネ電力の調達をコミットしたい需要家側は、長期間、再エネを囲い込むことが出来ます。再エネ事業者側は長期間の固定収入が保証されて、プロジェクトファイナンスを組めるなど、資金調達環境が大きく改善し、これが更に再エネ電源の開発を加速化させる効果を持ちます。

 

デジタルグリッドが提供するコーポレートPPAモデル

 

これからFIP(※注釈4)が導入されますが、プレミアムを載せることが保証されていても、JEPXでの取引であり、かつ参照価格がJEPX価格連動という条件だとプロジェクトファイナンスは組めないのが現状です。銀行をはじめとする金融機関は非常にシビアです。

今後、再エネ導入コストの更なる低下も見込める中、価格が長期固定となると、確かに契約の切り替えはできなくなりますが、確実に再エネ調達をし続けられること、また電力調達費用の見通しが得られることで安心感を得られるという効果も大きいですよね。最近の卸電力市場価格が高騰した騒動を目の当たりにして、固定価格での電力調達の重要性を実感した人も少なくないでしょう。

また現行の価格水準でも30年で原価を引っ張ると相当安くなります。PPAモデルは30年後にも供給元の太陽光パネルを設置している建物が存在しているのか?という問題はありますが、野立て太陽光なら問題ありません。

--技術についても教えていただきたいのですが、AIを使って作っているのはどの部分で、技術的にはどこに強みがあるのでしょうか?

顧客管理システムから一般的な情報を入れて、また電力データについては、スマートメーターのデータやDGC(デジタルグリッドコントローラ)から取得して、短期・長期の需要モデルを構築し、将来需要の予測解析を行っています。予測と実績の差分の部分は、プラットフォーム上でザラバ市場を用意して、買ったり売ったりと約定処理を実行して、最終的にはOCTTOに報告するところまでDGP上で実現しています。

JEPX調達部分は、DGPの中で完結するのではなく、実際は私達がお客様に代わってJEPXに買いに行っていますが、お客様からすると、調達方法を指定するための情報を入力すると、DGP上で、計画提出から需給調整も含めた電力調達業務が全て自動的に行われるように見えます。

DGPの強みというと、将来需要の予測AIをお客様毎に作っていること、また弊社固有の売買ロジックを作っていることでしょうか。予測AIのロジックはAIの大家である東京大学の松尾研究室と共に作っているのですが、需要場所に設置する「デジタルグリッドコントローラー」(以下、DGC)の中で、エッジで動く「Light GBM」という軽めのものを使っています。発電予測は自己回帰モデルの相性が良いということが分かっていますので、サインカーブ上で1コマ目と48コマ目が連続になるよう調整したり、気象データを取り込んだりしています。最終的に定格出力からのずれを計測していますが、4.5%程度の誤差率ですので、市場水準としては9%程度が通常であることを考えると、予測精度としては悪くないレベルにあると理解しています。

--投資銀行勤務からスタートアップへの転身で、不安な気持ちもありましたか?どのように判断されたのでしょうか?

デジタルグリッドという技術は東京大学の特任教授であった阿部力也先生が開発されたのですが、私は大学3年生の時から4年間、阿部先生の研究室で勉強しました。当時は分散型電源を活用して電気に色を付けられることや、P2P取引というコンセプトを説明しても、まともに話を聞いてもらえませんでした。電気は電力会社から買うのが当たり前だったので、「電気が自由に売買できる意味なんてあるの?」、「分散型電源から直接電気を購入なんてあるわけないでしょ」という反応でした。

周囲からはこうした厳しい反応でしたが、僕自身にとっては、この学生時代の研究が凄く楽しかったんですよね。学生時代に感銘を受けた出来事として、よく引用させていただいているのは、以下の講義資料との出会いです。この絵に魅力を感じて以来、いつか電気に革命が起こり、僕らは無限のエネルギーを使いこなせるようになると真剣に信じてきました。私が子供のころは、石油などの化石燃料資源はいずれ枯渇してしまい、将来、エネルギーが不足する言われていて、それを信じていただけに衝撃は大きかったですね。

 

豊田社長が感銘を受けたとされる東京大学駒場講義の引用

 

卒業後も、よく阿部先生のところを訪問しては、「ゲートクローズ後のプロセスはどうだ」とか、「今後の石炭発電はどうなる」とか、「系統連系協議って何をするのか」とか、「分散型電源が増えてきてどうなる」とか、電力の話をしていました。そんな2017年のある日、いつものように阿部先生を訪問すると、ずっと白髪だった阿部先生がいきなり黒髪に変わっていたのです。何の心境の変化なのかと尋ねると「やっと事業を立ち上げる準備ができたからやるぞ!」と声をかけられました。その時、私に迷いは一切ありませんでした。即断即決でした。家族くらいには相談しろよ、というのはあるかもしれませんが(笑)。

僕は、小学校1年生と年中の子供がいるのですが、この子達のために将来のエネルギー問題を解決してあげたいという思いを強く持っています。子供たちに誇れる世の中を作りたいです。僕は、自律心の高い人間ではないので、エネルギー制約を受けつつ我慢しながら生きるのではなくて、無限に使いたいと思ってしまうんです(笑)。リニアモーターカーとかも便利ですからなんとしても実現させたいですよね。けれど、そのためには現状の4-5倍のエネルギーが必要です。こうした利便性を享受していくためには、地球環境に負荷をかけずに、エネルギーの限界費用を下げていくしかありません。

手触り感がある問題でないと、なかなか動けないですし、マイナス方向の思考だと物事は進まなくなってしまうと思っています。僕は自由にオープンマインドで無限な可能性を追求していきたいです。再エネを増やして限界費用を下げていくことは、間違いなく地球にも優しい行為ですし、だからこそ、迷いなく突き進むことが出来ているのだろうと思います。

--再エネに対するこだわりは、昔も今も相当強く持たれているのですね。

そうですね、日本では今でも再エネ発電量は全体の20%程度しかなく、そのうち半分は水力という状況です。今まで以上に導入していかなければならない状況の中、FIPに移行し、このままいくと再エネは増えていかないのではないか?という強い危機感を持っています。原発についても、将来の電源ミックスのどこまでを担えるのか?というと不透明な部分が多いですよね。

FIP導入後は、再エネも市場に差し込んで、インバランス責任も負ってねというだけでなく、太陽光を増やすための具体的な仕組みが必要です。2012年と比較してkW単価は1/5、発電効率は2倍、コスト効率にして10倍くらいにはなりました。卒FIT太陽光を7円台程度であれば、インバランスリスク(※注釈5)を自ら負ってでも買いたいという小売事業者もいることが分かりました。それでもなお、曇った日は発電しない太陽光を新たに作り、インバランスリスクも負いつつ、需要家が求める価格帯で提供するのは簡単なことではありません。

50社の日本企業がRE100(※注釈6)に加盟していますが、RE100加盟企業の電力調達部の方ですら、調達価格が10%高くても再エネを購入しようとはならないのではないでしょうか。非化石証書の調達量が伸び悩んでいることからも、コストを乗せてまで買いたいという企業が不足しているのでは、と感じています。

--2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、より良いエネルギー業界を作っていくためには何が必要でしょうか?

再エネを増やす施策が肝になってくると思います。洋上風力とかバイオマスとか、日中だけでなく継続的に発電可能な再エネ電源が重要ですね。再エネ業界の詳しい方に話を聞いても、国の洋上風力ビジョンで掲げられている規模で洋上風力規模を拡大させていくのは相当難易度が高い。年間に1~3GWも本当にやれるのだろうかとおっしゃっていました。規制とか環境アセスとか、国が支援することで事業の予見性を高められる部分が多分にあるとも思います。また日本の大陸棚は水深が浅い部分は限定的ですので、着床式で安価にやれる適地が豊富にあるとは言えないのではないでしょうか。浮体式の開発促進を支援するための仕掛けも必要でしょう。

再エネに加えて、蓄電池も肝になってくるでしょうね、再エネ比率を高めていくには、蓄電池とセットで導入していく必要がありますので、蓄電池のコストが今後どこまで下がっていくかは重要なポイントです。また、カーボンニュートラルな電源であれば、全てが再エネである必要はないと考えています。カーボンニュートラルな燃料や炭素を取り除く技術の開発も進んでいますし、再エネと調整力を持つ火力はどこまでいっても共存していく世の中ですよね。他にも、森林を増やすとか、再エネ導入量を増やすだけでなく、多様な技術を追求していく必要があると思います。

--最後の質問ですが、普段、仕事をする中で心掛けておられること、信念等はございますか?

世の中には、色んな理想のリーダー像があると思いますが、この歳になって自分を無理やり変えるのも無理があるかなと諦めています。私は、自分がリードするよりも、みんなが主役になれるような組織がしっくりきますね。というか、率直に言いますと、皆を引っ張る頼れるリーダーシップという感じはなく、カリスマ性が乏しいのです(笑)。リーダーとそれ以外といった立場の違いはなく、色んな人と同じ目線で話して、コラボレーションするスタイルが自分の肌に合っていると感じています。


【注釈】

※1: 30分値
電力会社が家庭に設置するスマートメーターが、30分ごとに計測して電力会社に送信する電力使用量の値

※2: エネマネ
エネルギーマネジメントシステム。ICT技術を活用して家庭やオフィスビルなどのエネルギーの使用状況を管理して、最適化するシステム。

※3: PPA
PPAはPower Purchase Agreementの略。PPAモデルとは、PPA事業者が需要家に太陽光発電システムを無償設置して運用保守を行い、それを需要家に販売するモデル。

※4: FIP(Feed-in-Premium)制度
再生可能エネルギー発電事業者が発電した電気を卸電力取引市場や相対取引で売電をした場合に、基準価格(FIP価格)と市場価格の差額をプレミアム額として交付する制度
https://enechange.jp/articles/fip

※5: インバランスリスク
大きな需給インバランスが生じたときに、新電力が系統管理者(現:一般電気事業者)に支払うペナルティ

※6: RE100
企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ
https://www.env.go.jp/earth/re100.html


【取材後記】

飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍されている豊田社長ですが、皆を引っ張るリーダータイプではないと自らを評するなど、意外な一面をご披露いただき、勝手に親近感を覚えてしまいました。百戦錬磨の小売事業者ですら時に状況を見誤るほどに複雑な電力業界において、需要家がリスクを負って発電家と直接契約する仕組みは危うさもあるのではないかな?と思い、敢えてネガティブ寄りの質問も用意して臨んだインタビューでしたが、DGPのプラットフォームが、FIP導入以降の再エネ導入を後押しする収益モデルを描くというシナリオは十分な説得力がありましたし、なにより、再エネ導入拡大に向けて自ら道を切り開こうとされる豊田社長の情熱に、胸が熱くなるのを感じました。

電気を買ってもらうことが主眼となる小売事業者と異なり、正しい電力市場の知識、リスク認識に基づく選択力を需要家に備えてもらうことが主眼となるDGモデルは、健全な電力調達モデルを追求することそのものがサービスの提供価値であり、価格競争のためにリスクを過少に見るといった力が構造上働き得ないところも本モデルの妙味であると勝手に解釈しています。また、皆が「小売事業者」になるのでなく、「デジタル技術を提供するプラットフォーマー」と「小売事業者の目線を持つ需要家」という新たなポジションと関係性を産み出すことで、電力調達の新たな最適モデルを導くポテンシャルを秘めた事業だと率直に感じます。今後も業界初のイノベーティブな電力調達モデルを次々と世に送り出してくれるのを楽しみに待っていたいと思います。

(終わり)


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記事執筆日: 2021年2月19日

執筆責任: GreenTech Labs