イギリスの事例に学ぶ、電力スタートアップの可能性

今回のトピックは「イギリスの事例に学ぶ、電力スタートアップの可能性」です。
イギリスを参考に、日本のスタートアップに活かせるヒントを探ります。



もくじ

[1] イギリスのスタートアップ環境について
[2] 電力自由化の歴史とスタートアップ
[3] ITやクラウドファンディングを活用したスタートアップ事例
[4] 日本のスタートアップに活かせることは?



[1] イギリスのスタートアップ環境について

イギリス、特に中心都市のロンドンは、スタートアップ・エコシステムが極めて発展していることで知られています。
ロンドンがイノベーションや起業家の支援体制が充実している都市となっている理由として、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)は3つの理由をまとめていますのでご紹介します。

1.市場を持っていること。特に欧州の他国と比較した場合、国内に市場があるためスタートアップや海外投資家からの魅力も高いとされます。
2.米国に次いで 2 番目のノーベル賞受賞者を輩出している国であり世界有数の大学・研究機関、グローバル企業の欧州本部の拠点が集積していること。
3.政府の支援施策が充実していること。

2018年、イギリスでは63億ポンド(1ポンド141円換算とすると、約8,900億円)がスタートアップに投資されました。一方、日本では2018年のスタートアップ投資総額が3,848億円でした。イギリスの人口が6,600万人で、日本の1.26億人の半分程度であることを考えると、スタートアップ投資の規模の大きさがわかります。

この状況を踏まえて、イギリスの電力自由化と、電力小売りに取り組むスタートアップについて見てみましょう。

[2] 電力自由化の歴史とスタートアップ

イギリスでは1990年に電力自由化が始まり、1999年から全面自由化となりました。1社独占だった電気事業者は、その後、Big6と呼ばれる大手電力会社6社が電力市場の95%のシェアを占める状況になりました。
そして現在では、電力小売りに取り組むスタートアップが何社も登場し、利用者は自由に電気事業者を選ぶことができます。

電力小売りに取り組むスタートアップは、大手電力会社に比べて、再生可能エネルギーの割合が極めて高く温室効果ガスの排出が少ないことを売りにしているという特徴があります。
さらに、ITやビジネスの仕組みを活用したユニークなスタートアップも多数出てきており、今回はその中から2社をご紹介します。

[3] ITやクラウドファンディングを活用したスタートアップ事例

◆Pure Planet

2017年に設立された同社は、携帯電話業界で豊富な経験を持つ企業家アンドリュー・ラルストン氏が創業者です。
事業の特徴は、100%再エネ由来の電気と100%カーボンオフセットのガスを供給することに加え、カスタマーセンターを設置しないなど、AIやICTを活用してコストを抑えています。また「事業者や他の顧客と関わりたい」という顧客の潜在的なニーズをITで実現していることがユニークな点です。具体的には、オンライン・コミュニティでは同社に対する質問を他の参加者が回答する。オンライン・コミュニティへの参加は既存客だけでなく、加入を検討している潜在顧客も可能です。参加者は貢献度に応じてAmazonポイントに交換可能なポイントをもらうことができるため、回答することのインセンティブもあります。これらのアイデアはいずれも英国の携帯電話会社“Giffgaff”の事例を参考にしていると言われます。

◆Ripple Energy

南西イングランドに拠点を置くRipple Energy。
特徴は、消費者が風力発電に直接投資するモデルを採用したことです。顧客は風力発電所に出資して、その一部を所有することができます。それが同社にとっての資金調達を意味しています。

今年4月に、同社はクラウドファンディングによる出資の募集を開始しました。これによって75万ポンド(約1億円)を調達することを目指しています。この金額は、会社の株式の23.21%になります。
同社はそれによる調達資金を使い、試験的な風力発電所を作り、800戸の住宅に電力を供給することを計画しています。
同社のSarah Merrick氏は「調達完了から、この試験的プロジェクトを開始できるようになるまでに3〜4か月かかると予測している」とメディアの取材に答えています。

[4] 日本のスタートアップに活かせることは

日本でも、2016年の電力自由化以降、電力小売りを手がけるスタートアップが徐々に登場しつつあります。
イギリスと日本では置かれている環境も違うため、必ずしもイギリスで成功しているスタートアップの方法がそのまま日本に当てはまるということではないかもしれません。しかし、顧客の希望や潜在的な欲求を汲み取って、事業に組み込むことで成功確率を高めるという点では、ヒントになることも多いのではないでしょうか。
  


  
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記事執筆日: 2019年5月27日

※この記事は、上記の日にち時点で得られた情報に基づき、GreenTech Labsが執筆したものです。
このサイトにアクセスされた時点での、取り上げた企業ならびサービスなどについての最新情報を提供するものではありません。
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執筆責任者: 高橋昌紀(GreenTech Labs コミュニティマネージャー)

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