今後の電力制度の方向性 ~しばらくはモニタリング・ファインチューンするフェーズ?~

まーきち@エネルギー業界1年生の先輩探訪:第1回
エネルギーアンドシステムプランニング株式会社 加藤真一さん(後編)

 

加藤さんの今までキャリアの歩みに焦点を当てた前編につづいて、後編では加藤さんがご専門とする電気事業制度を中心にお話を伺いました。

 

前回のインタビューのつづき

――GreenTech Labsが支援していきたいと考えているイノベーションの主体は、必ずしも制度設計の議論をしていく上で力を持っているプレイヤーばかりではなく、逆に新規参入者に今後更に頑張っていってもらう必要があると考えているのですが、そういう事業者が制度設計の議論に影響力を持てる可能性はあると思いますか?また、そういうプレイヤーを支援するためにコミュニティとして果たせる役割は何かありますか?

いまの制度設計の進め方を考えると、個々の小規模な新規参入者が制度設計に関与していくことはなかなか難しいと思います。
そんな中でも、小規模な事業者の中でも相対的に大きな事業者が代表として意見を取り纏めて制度設計の場で訴えていく、という方法はあり得るのではないでしょうか。例えば、新電力全体で業界団体を立ち上げるべきでは?といった意見も役所側からも耳にすることもあります。また、役所は常に具体的な事業の実態・ユースケースの情報を求めているため、そういうところから対話を積み重ねていくことも有用な方法なのではないかと考えられます。
対話先としては、役所の中でも制度・政策を担当している課長補佐レベルとの対話が良いのではないでしょうか。有益な情報・意見は課長補佐から役所内で上に上げてくれると思います。

 

――電力システム改革で挙げられていた主要項目(広域機関の設立、小売の全面自由化、送配電の法的分離)も一通り実施され、主要な新市場(ベースロード市場、非化石価値市場、容量市場、調整力市場)も調整力市場以外は動き始めましたが、電力制度は次は何を軸に検討されていくと考えられますか?

すぐに新しい制度を検討していくというよりは、まずはいまある制度を動かしてみて、モニタリングし、適宜チューニングするフェーズになると考えています。
ベースロード市場にしても、先物市場にしても、そもそも取引量自体がまだ少ないため、少しでも事業者に活用してもらって、意見を吸い上げていく必要があると思います。
新しい制度を1年、2年程度で大きく変えるわけにもいかないと思いますので、2030年くらいまでは新しく立ち上がっていった制度・仕組みをモニタリングし、ファインチューンするフェーズになるのではないでしょうか。

 

――2022年度からの配電ライセンス制度は、新たな事業機会の良い機会になると思う一方、従来型の規制システムでは十分に自由度を持った事業が出てこないのではないかとも考えています。配電ライセンスを活用したビジネスの可能性についてはどのようにお考えですか?

ある程度、新規参入者に自由度を持たせた仕組みになるのではないかと思いますが、一方では、クリームスキミングが出来ないとされていますので、何が出来るのか?というのは、難しい問題ではありますね。
台風15号等の経験も踏まえ、レジリエンス対策を講じた地域マイクログリッドを運営する事業者など容易に思いつくところではありますが、既存の配電会社と違った価値を提供しようと思うと、自由度は必要ですよね。敢えて、制度・常識の枠を外すとどんなことが出来るか?という視点で考えてみた方が良いかもしれません。制度検討側もどんな面白いユースケースが描けるか?というアイデアは常に求めていると思います。
業界内の多様なプレイヤーと意見を交わしながら、未来志向のアイデアを構築して、行政と対話する等は、GreenTech Labsのようなコミュニティの場を活用して、やれるのではないでしょうか。コミュニティで新しいものを作りにいく際には、自分の会社の利害を超えて議論ができるか?が大切だと思います。
事業者が何か新しいことをやろうと思ったら、必ず補助金をもらって実証事業でという進め方が標準形かのように受け止められている点も気になっています。補助金をもらってしまうと甘えに繋がってくる部分もありますので、例えばLLPのような仕組みを活用してスモールで出来ることを仕掛けてみるということも大切ではないでしょうか。

少し話は変わりますが、分散型電源といえば、今後数年でガスコージェネのオンサイトサービスが期間満了になってきます。昔、特別高圧が引けないために自家発電で回避する、といったお客さまも結構ありました。こうしたお客さまが、そのままガスコージェネを継続利用するかどうか。導入した当時と電力・熱の利用が異なっているので、場合によっては分散型電源から系統電源に戻ってくることも想定されます。安価で使いやすい分散型電源が用意されているかどうか?というのは大切ですね。

 

――大企業を渡り歩いた後に、今はほぼご自身で会社を切り盛りされているに近い状況かと思いますが、それぞれの会社を経て感じておられる違いなどはありますか?

最近、大企業の社員は元気がなくなっている感じはしますね。そう簡単に未来の展望は描けないと思いますが、明るく元気に仕事をすることは大切ですし、楽観的でいることも大切ではないかと思います。
一方、ソフトバンクという会社もやはり大企業ですので課題はありますが、スピードが圧倒的に速いという点は明らかに違う点ですね。また、新たな事業プランを検討する際に、徹底的に検証するというところが他の会社とは違うと感じます。さらに、社長含め、若い人に自ら教えを乞うて、新しいツールをどんどん使いこなすようになっています。こういうマインドは忘れてはいけないと感じています。

 

今回お話しを伺った電力制度は、とても複雑な上に進行中の議論も多く、ついていくのが大変ですが、加藤さんのYouTubeチャンネルではそんな難しい制度の話も噛み砕いて解説してくださっており、初心者にも分かりやすい内容になっています。
今回の記事とあわせてぜひチェックしてみてください。

 

加藤さんの出演するYouTubeチャンネル「エネinチャンネル」

(おわり)


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記事執筆日: 2020年12月24日

執筆責任: GreenTech Labs